「部下が思うような結果を出してくれない」
「いくら指導しても成果が出ない」
企業向けの育成コンサルタントをしていると、営業部門の管理職の方からこのような悩みを打ち明けられることがあります。
同じように悩んでいらっしゃる方のお話をいくつか聞いていると、ある共通点に気づきました。
「自分の成功体験のコピーを部下に求めている」のではないでしょうか?
目次
環境が変わっている事に対応できていますか?
飛び込み営業で新規顧客を獲得していたあの頃。
ドアノック営業のスキルを身につけ、朝から晩まで足を動かすことが「成果」に繋がりました。
顧客先で契約やアポイントが取れると、帰還した営業所ではとても褒められます。
そして喜びが大きいほど、成功体験となって頭にこびりつきます。
「部下にもこの思いを味わってほしい」
管理職になったあなたは誠意からこう思うでしょう。
しかし、あなたの脳裏にあるスキルが現在も有効なやり方でしょうか?
環境が変化していることによって、過去の成功体験が再現性のないものになっているかもしれません。
では、環境の変化にはどんなものがあるか考えてみます。
✔ 例えば、2020年頃を境に多くの対面営業がリモート営業に代わり、コミュニケーションのコツも変化し始めています。
✔ 顧客層も世代が若くなると趣向や人生観すら変わり、俗に言う「ジェネレーション・ギャップ」があるでしょう。
✔ 顧客を保護する目的で、法律や制度が変化していることがあります。
これに伴い基本ルールも変化している中で、以前のやり方に固執していると「ガラパゴス化」してしまうかもしれません。
もし、あなたがプレイング・マネージャーなら、ご自身も営業手法の変化に対応しながら過去の成功体験の殻を破ろうとしている最中かもしれません。
役職上、成功のプレッシャーがあるとは思いますが、環境が変化している中では部下とスタートラインが近くなっていることもあります。
営業スキルや成功までのプロセスの共有ができる「場の運営」が自分の役割のひとつと捉えてみませんか。
部下からも成功体験を吸収する姿勢がチームの底上げになるかもしれません。
行動の抑制をするのか、強みを伸ばすのか?
もし、あなたが自分の成功体験を重視しているなら、部下とのやり取りでは「指示命令」型になっているかもしれません。
「私の成功体験をまねるべし!」
無意識ベースでこのような価値観を持って部下に接していると、あなたの部下は「行動の抑制」を受けていると感じるかもしれません。
「行動の抑制」とは、自分で考えたことを実行するのではなく、言われたように行動をしなくてはいけないというものです。
もし部下が、自分の行動に制約を受けていると感じると、あなたに安心と安全を感じられなくなります。
その結果、部下はあなたから距離を置こうとするか、あるいは攻撃的な態度をとったりします。
部下が空返事で受け答えする
反抗的な態度が目立つ
このような出来事があるなら、部下からSOSのサインが出ていると捉えてみてください。
「自分なりに考えていることを聞いてもらいたい」
「レベルの高い成功事例の即実行を求められても辛い」
こんなSOSかもしれません。
ではもし、このような状況になっているなら具体的にどう対処していけばよいのでしょうか?
どうして部下を観察する必要があるのでしょうか?
それは、部下の強みや個性を見つけるためです。
例えば、あなたの強みが強いリーダーシップで周りをぐいぐい引っ張るタイプだとします。
あなたが問題視している部下は、性格がおとなしくてそれをまねするのは難しそうです。
しかし、彼は人の話を聞くのが上手で自分の弱みを出すこともできるとします。
このような部下なら、将来は周りが協力してくれるリーダーシップをとることができるかもしれません。
人はそれぞれ個性があり、自分の強みや個性が発揮できる環境で能力も発揮できるものです。
自分とは強みが違うなと感じる部下には、よく観察をして彼らの特徴と強みを見つけてみましょう。
弱い部分だとレッテルを張っている特徴も、裏返すとその人の強みにもなりえます。
観察して、先入観をひっくり返すしてみることで気づくことがあるかもしれません。
未来のことを想像するのが苦手という方もいらっしゃるかもしれません。
「先のことを考えると、良くない結果やネガティブなイメージばかり浮かんでしまう・・・」
特に仕事に関してだと、失敗を回避したいという強い思いからそのようになってしまうのかもしれませんね。
「部下の今までの失敗を思い出すと、とても彼が成功している姿は想像できない・・・」
このように感じている方は、まずは「観察」から始めてください。
✔ 成功イメージは意識的にしか持つことができません。
ましてや自分事ではなく、他人の成功イメージを想像するのは本来簡単なことではないと思います。
しかし「想像できないものは実現しない」という言葉もあります。
あなたが過去に自分の成功をイメージしたように、部下も自分自身の成功を想像しているはずです。
経験の浅い部下の成功イメージはまだぼんやりしているかもしれません。
あなたがミーティングの機会や対話を通して部下の成功イメージを共有して育てるコミュニケーションが取れると良いですね。